望月 彰先生は、大学を卒業したばかりの新任の先生で。 私たちの副担であり、化学を専攻とする理科教師。 ワイシャツの上から白衣を羽織ったその背中は、どこか猫背で気だるそうで。 薬品の匂いがする先生の黒縁メガネの先は、なにを考えてるのかわからなくて、正直怖い。 『……先生?』 今だって、ホラ。 勇気を振り絞って出した私の声に、応えてくれない。 先生には私の声はいくら張り上げても届かない気がして、とうとう私は視線を下に向けてしまった。