「気をつけ、礼!」 「「「ありがとうございました。」」」 ―…先生の授業が終わった、直後のことだった。 『……っ。』 少しだけでもいいから、先生と話したくて。 少しだけでいいから、先生から“私だけの”声を聞きたかった。 既に教室から出て行こうとしている先生を引き止めるかのように、勢い良く机から立つ。 『先生…っ』 先生が、一瞬だけ私を見た。 驚いたように。けれども、真っ直ぐ。 でも、先生が足を止めることはなかったんだ。