「……ごめん。」 ―…なんで、上手くいかないんだろうと、切実に思った。 一瞬だけ目を見開いて見せた、梨花の不安げな瞳に一気に涙がたまって。 涙を零すことを躊躇うように、梨花は必死に歯を食いしばっている。 「……うん。」 本当に、本当に。 聞き取れることさえも危ういくらい、線が細い“うん”。 梨花の発した2文字の言葉は、まるで“知ってたよ”と、呟いてるみたいで。 爽くんに見えないように背中越しで握った赤い梨花の手が、プルプルと揺れている。