そこで沖田が口を開いた。 「もう行きましょうよ」 「うっだがしかし・・・・・」 近藤は唇を噛み、にがい顔をしてみせた。 だが沖田は澄ました顔で池田屋を見つめる。 蒼井睦月が言っていた池田屋事件。 今ここで始まろうとしているのだ。 まるで自分が犬になって、餌を目の前に置かれたまま「待て」をされている気分だった。 早く、早くと沖田の血が騒ぐ。 そして、ようやく近藤の口から期待の言葉が出た。