愕然として口をぽかんと開けていると、女の方からなにやらイイ匂いが漂ってきた。
「(…………腹、減ったな)」
昨日も結局、なにも食べてない。
腹が減って当たり前か、と軽く自己完結した。
……尚更、この匂いが空腹に染みる。
「たろうちゃん、ご飯できたよ。こっちおいでー」
にこにこと馬鹿みたいに笑う女は、お玉を片手に手招きをした。
……飯、食わせてくれんのか。
この空腹感に耐えられる自信がなく、おれはいそいそと布団から抜け出した。
「はい、たろうちゃん。今朝はシャケの塩焼き定食だよ!たーんと召し上がれ!!」
どんっと置かれたお盆には、水とシャケしか乗っていなかった。
って、魚しかねぇじゃねぇか!!
単品っつーんだよ、こういうのは!!
ツッコミたい衝動に駆られながらも、おれは一心不乱にシャケにかぶりついた。
…塩加減が絶妙……こんなにうめぇシャケ、初めて食ったな…。
「えへへ、美味しい??」
……言ってやんねぇけど。

