「(っ、やっべぇ…!!)」



止まれっ…!!

クソ、止まれっての!!


願いも虚しく、振り上げた拳は女の顔面を狙っていた。


当たるっ…!!




―ぽふっ




「………………はっ?」



絶句した。


唖然としたまま動けないでいると、女はへらりと笑った。



「わ、びっくりした。怪我しちゃうじゃん、やめてよー」



おれの手を右手で握ったまま、にこりと笑いかけた。


お、おおおっおれのっここ拳をををを…っ!!!!


すすす素手でいとも簡単に受け止めやがった…!?!?



「な、なっ、ありえねぇ…!!!!」


「どうかした?ねぇねぇ、ウチに来なってばー」


「こん、こんな馬鹿丸出しの顔した小娘に…!?!?」



ふっ、と。


冬の寒さから大気に息を吐き出すように。


おれは気を失った。



…意識が途切れる、直前に。


冷たい地面が背中にぶつかるのを、確かに感じた。



「(…頭打ったな、いてぇ……)」



薄目で見た視界には、目を丸くして驚いている女の姿があった。



「(…………よく見りゃ、可愛いのな)」



視界が黒く染まった。