ザー…ザー…


壊れたテレビのノイズさながら、騒音を撒き散らす雨。


うるさい。
うるさい。
うるさい。
うるさい。

入って来るな。



“ショウ”



やめろ。



“ショウ”



おれの、きおく、に、



「たろうちゃん!!寝てるのー?」



意味もなく閉じていた瞳を開けると、頬を上気させた維奈がおれを覗き込むようにして立っていた。


バカみたいに間延びした声が、不本意ながら安心感を与える。


…くそ、なんでおれが。


こんな意識してんだよ、こいつのこと。



「…寝てねーし。お前おっそいんだよ」



泣き腫らした維奈の目は真っ赤だ。

充血している。


うさぎみたいだな、なんて。


とうとうおれはイカレちまったらしい。


自分がなんつーか、…気持ち悪ぃ。



「………えへへ…ちょっとお風呂でも泣いちゃって、遅くなったの」



維奈はおれの隣に座ると、ソファの背もたれに身体を預けて天井を仰ぎ見た。


ソファが振動で少し軋む。


照れ笑いにも聞こえるそれの真相を確かめようとして、伏せていた顔を上げたときだった。




「―――あたし、フラれちゃったみたい」




維奈の双眸から真珠のような雫がこぼれ落ちた。


せっかく着替えたスカートに真新しい染みができる。


ぽたり、ぽたり。


…心がざわついて叫び出したくなるこの衝動は、なんだ。



「たろうちゃんの話、したの。…あ、彼、コウちゃんって言うんだけど…。そのコウちゃんがね、今すぐにたろうちゃんを追い出せなんてひどいこと言ったんだよ」



どくり、と。

心臓が嫌な音を立てた。