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「ユリちゃん!あのお嬢様に一泡吹かせてやったって本当!?」


今日の業務が終わるや否や、そう言って駆け寄ってきた佐知代さん。まったく、誰よ。こんなに口軽いの。まぁ、事情知ってるの、ヨシ姉しかいないんだけど。

横目でヨシ姉を見やれば、罰が悪そうにちょろっと舌を出していた。


「でも、あれねぇ。一万円はもったいなかったわよねぇ。」

「そうよユリ。どうせなら、ありがたくもらっておけばよかったのに。」


…あ、そっか。目の前で万札を破いてやった。としかヨシ姉に説明してなかったんだっけ。いまだ一万円について話しているふたりの目の前に、エプロンのポケットから一万円札を取り出して見せた。


「…え?これ…」

「どういう…」

「実は、破いたフリでしたー。昔から手先は器用なので。」


へへっと笑うと、ふたりも呆れたように笑う。


「ちゃっかりしてるわねー。臨時収入だと思えば?」

「どうせ破いたことになってるんだから、遠慮せず使うといいわ。」


臨時収入、ねー。何か、お母さんに買って行ってあげようかな。
でも今日はそんなことより、景雅様の笑顔を見れたことが何故か1番嬉しかったっていうことは、誰にも言わず心の中に秘めておくことにした。





【03*END】