◆◆◆


疲れた、のは確かで。
眠たい、のは本当のはず。
でも眠れないのはきっと、妙に気持ちが高ぶっているからなのか。

じゃあ、その理由は?
雫と会えたから?
懐かしいメンツと顔を合わせたから?
それとも、傷痕を見られたから?

……否、きっと、全部が当てはまる。
でもそれ以上に胸に引っ掛かるのは、あの、傷痕を見られたとき。すれ違った椎名が、あたしだけに見えるよう、意味深な笑みを浮かべたことだ。

あいつは一体、何を考えているのか。
あたしと雫のお揃いの傷痕を見て、何を思ったのか。

別にあたしがどう思われようが、何をされようが、どうでもいいけれど。雫にだけは、害が及ばないように。それだけが心配。

ふと、隣のベッドで静かに眠る雫へと視線を向ける。暗くて様子は見えないけど、規則的に聞こえる寝息に、よく眠れているのだろうと推測する。

――頭でも、冷やしに行くか。
きっとあたしの、考えすぎだ。

だから音を立てないようにベッドから抜け出し、机上に放置していたパーカーを手に部屋を出た。