キッチンに置いてある灰皿。 そこに入っている吸い殻は、黄ばんでいるように思えた。 古い物なのだろう。 独り暮らしにしては広すぎる部屋。 ドアの向こうのダブルベッド。 充は改めて想像する。 桃香には男がいた。 そしてこの部屋で一緒に住んでいた。 あるいは一緒に住むつもりだった。 しかし事故があって――……男とは別れてしまった。 未練がある桃香はこの部屋から出ることはおろか、タバコの吸い殻すら捨てられないまま現在に至る。 ……のではないかと。