エンプティープリンス

「奏…顔怖い。全然王子様じゃない。」

「…別に今はそんなのどうでもいい。
とにかく…。」


会いたかった。
教室で見るのとは少し違う表情の彼女に。



「お、今日は一限数学だっけ?」

「ああ。」



時計を見ると授業開始5分前。
ドアを見ると彼女が立っていた。
そのまま真っすぐと教室に入って来て、授業の準備を始める。

いつもなら教室に入ってきた彼女とすぐに目が合うのに、今日は全く合わない。



「それでは授業を始めます。
今日はまず前回の復習として小テストを行います。」


そう言ってプリントを配る彼女。
そしてテストを受ける俺たちの机の横を歩く。
俺のすぐそばまで来たのに、いつもとは違って異常なくらい距離を感じた。







この日の授業で、俺は一度も先生と目が合わなかった。
というよりは…先生が一度も俺を見なかった。

傍から見れば、たったそれだけのこと。
だけど、俺にはどうしても『たったそれだけのこと』には思えなかった。
そのくらい…辛かった。