エンプティープリンス

「何もなくなんかないわ…。
あなたは…知らないだけ。」

「え…?」

「あなたにどれだけ私が励まされたか、知らないでしょう?
あなたがしてくれたメイクで、どれほど勇気がついたか…
あなたがアレンジしてくれた髪型だと、どれほど前が向けるか…
あなたがくれた言葉がどれほど私の背中を押してくれたか…
あなたは知らないだけなの。というか…私が伝えていなかっただけ。」



ぎゅっと俺を抱きしめる腕を強める彼女。
俺も彼女の背中に手を回す。



「あなたの中身を知ろうとしないなんて、それこそ勿体ないわ。
あなたにはしっかりとした『自分』があるの。
優しくて、頭が良くて、寂しがり屋の王子様。
それはちゃんとした、あなた自身よ。
空っぽなんかじゃない。私は知ってるわ。」



そう。彼女だけが見てくれた。彼女だけが知っている俺自身。
むしろ…彼女にしか見せなかった自分自身。


こんなことを言われると、自覚していなかった気持ちも自覚せざるを得なかった。



『好きだよ、先生。』




やっと分かったよ。見えない気持ちの答え。

好きだ。先生のことが。
たったそれだけのシンプルな気持ちがストンと残る。
シンプルだけど、曇りのない真っすぐな気持ち。
いつも彼女が俺を見つめるのと同じくらいに真っすぐな…。