* * *


気がついたら放課後になっていて、気がついたら数学家教材研究室に足が向かっていた。


「奏くん!!今日は時間あるかしら?」

「ごめん。今日は用事があるんだ。」

「そう…なの…。」


用事なんてない。本当は。
でも…会いたい。彼女に。

もう一度会えば、なんだか見える気がした。
このもやもやとくすぶる気持ちの答えが。



コンコン

「はい?」

「失礼します。」

「高橋くん…。顔の怪我は…。」

「もう大丈夫。傷っていうか打撲は少し残ってるけど、痛くないよ。」

「そう…。良かった…。」


心底ほっとした顔をする彼女。
こういう顔、他の奴には見せないのかな…?
…なんて、こんなこと考える自分、どうかしてる。
でも…この前もこれに似た気持ちを抱いた自分を忘れてはいない。


「先生。」