エンプティープリンス

「え…なにその反応…。
だっていつもの奏はさ、あんな熱くなんないじゃん。教師があんな風に言われたってさ。
なのに昨日は違った。相模香織の話題が出た瞬間に顔が険しくなって、挙句王子様らしからぬ行動に出たし。男の胸倉掴むなんてさ…絶対しなかったじゃん。
基本的にそんな風に怒ることだってないし。
奏は…いつも何に対しても『無関心』だったのに、昨日は無関心じゃなかったよ。
相模香織に対しては無関心じゃない。」

「…無関心じゃない…?」

「うん。
最近ちょっと変だなーとは思ってたんだ。」

「変…?」

「うん。変って別に悪い意味じゃねーけど。
でも…なんか奏、変わった。」

「変わった?」

「うん。
自分で気付いてないだろうから言うけど、目で追ってるよ、数学の時間はいつも。
それになんか…。」

「…?」

「内側が満たされてる、そんな顔してる。最近は。」



『内側が満たされてる』
それは最近、確かに俺が感じていることだった。

女に求められるままに抱いても、何をしても満たされなかった俺が
毎日がとても空虚だと感じていた俺が
満ちていた。彼女で満ちていた。