「せ…んせい…?」

「この怪我は…私のせいね。」

「そんなこと…。」

「あなたは…本当に…優しい王子様ね。
私なんかのことで…あなたが怒らなくてもいいのに。
でも…ありがとう。」



彼女の声が耳元で聞こえた。

俺を包む温かい感覚が、俺の中を満たしていく。
それがとても不思議な感覚だった。

どんな女に抱きしめられても、決して自分からは回すことのなかった腕を、彼女には自然と回している。
もっと…近付きたい。そんなことさえ思う。

内側が満たされるってこういうことだ。
突発的にそう感じた。
今まで、どんな人間にも感じることのなかった不思議な感情を、彼女にだけは抱いていた。



「…俺が怒りたかっただけだから、先生は謝る必要ないよ。」

「…だって…。」


そう言って俺から離れ、そっと頬に触れる。


「…っ…!!」

「痛いんでしょう…?」

「傷の痛みなんてどうでもいい。俺は…。」