エンプティープリンス

俺は小さな椅子に腰を下ろした。


「…珍しいわね、高橋くんが顔に怪我をするなんて。」

「大抵の男は、俺のことが嫌いだからね。」

「どうして?」

「『王子様』だからじゃない?」

「自分で言うのね、『王子様』だなんて。」

「毎日言われれば、嫌でも覚えるよ。」


嫌でも…ね。


彼女の手が俺の頬に伸びてくる。
そして、そっと触れた。


「…ってぇ…。」

「あ、ごめんなさい。軽く触っただけなんだけど…。」


ホントに軽くしか触れられていないはずなのに、ズキズキと痛む右頬。


「内出血してるわね。
…しばらく痛いだろうけど…待つしかないわ。」

「…いいよ。俺がまいた種だし。」

「え?」

「殴られたのも自業自得ってこと。」