エンプティープリンス

「やべぇ…相模だ。」

「逃げよ。」


さすがに殴ったことはヤバかったと感じたのか、人混みを掻きわけて逃げる二人。
そして俺の周りにはくだらない女たち。

「奏様っ…!!」

「先生、奏くんが…っ…!!」

「え?」


やじうまたちが退けて、先生の目に俺が映る。
一瞬驚いた顔をしたけど、冷静な顔つきに戻って指示を出し始める先生。


「みんなはもう帰りのHRの時間でしょう?
教室に戻って。もうすぐ担任の先生がいらっしゃるわ。
高橋くんはまず保健室ね。」


先生の言葉に渋々教室に帰る生徒。

「やっぱさっきのは高橋が悪いよなー。」

「でも奏様に限ってそんなことは…。」

「奏様が先に手を出すわけないじゃない!!王子様なのよ?」

とかなんとかいう声が聞こえてくる。



そして俺は先生の後ろをついて歩いた。


きっと、聞きたいことは色々あるんだろうと思う。
なのに何も聞かないでいてくれるのはある意味先生の優しさだ。

俺だって…まだ…
なんであんなことをしたのか、いや…そもそも、なんであんなに腹が立ったのか、その答えが出ていない。
聞かれたってうろたえるだけだ。



「さぁ、座って。」