エンプティープリンス

ポーチを開けるとあんまり派手じゃない色のメイク道具ばかりが目につく。
もちろん量もそんなに多くない。

ってなんで俺、こんなことやってんだろ…?
少し我に返る。

必要以上に人と関わるのを避けてきたはずの俺。
特に女に関しては尚更。
自分から女に関わるなんてことは、もう長い間してこなかった気がする。
それなのに…彼女を見ていると…。


『なぜだか無性に…構いたくなる。』


その理由が全然見えてこないからとりあえず、彼女の不器用すぎる生き方を見ていられないからという適当な理由を付けて納得することにした。


「目、閉じて。」

「あ、はい…。」



目を閉じた彼女は思いの外…美しかった。
美しいなんて普段は決して言葉になんかしないけれど、今の彼女にはこの言葉しか相応しくない。


少しずつ、俺の手で彼女が変わっていく。
いや…正確に言えば…
『俺の手で変えている』。
その感覚がなんだか妙に心地良かった。自分じゃ説明できないくらいに。



「はい、完成。」


俺は彼女に鏡を手渡した。