エンプティープリンス

「そう。
先生は…どうしてあの日、わざわざ俺の看病までしてくれたの?
普通の教師は、家まで送り届けはするかもしれないけど、その後看病したりはしない。
だから、その理由を聞きたい。」

「理由…。
そうね…あなたがあんまり辛そうだったから放っておけなくてっていうのもそうだけど…。」


言おうか言うまいか迷っているようにも見える彼女の表情。
でも、言うと決めたのか真っすぐに俺を見つめてくる。


「…いつも、独りに見えたから。」

「え…?」


独り…?俺が…?そんなわけないだろ?
いつも人に囲まれて、適当に好かれて…それで『独り』?
わけがわからなくて俺はきょとんとしてしまう。
そんな俺の右頬にすっと手をあてて、彼女は言葉を続ける。


「あなたを初めて見た時から思っていたけど、こうして見ると…
あなたの瞳は…なぜだかとても寂しそうね。」


彼女の目が俺の目とぶつかる。

だけど…俺が…寂しい?
寂しいってどんな感情だよ…?
本当にわけが分からない。



「あ、でもこれは私の勘みたいなものだから違うかもしれないわね。
ごめんなさい。急に変なこと言って。
でも…放っておけなかったのは本当よ?」


沈黙に慌てたのか、彼女は早口でそう言った。