エンプティープリンス

「本当はさっきみたいな話し方…なの?」

「そ…うですね…。
さっきはすみません。先生なのに、あんな風に話してしまって。
なんか気が動転していたみたいです。」

「ああ…いいのよ。
そういう意味で言ったんじゃないわ。
ただ、新鮮だなって思っただけ。」


さっきよりも柔らかく微笑む相模香織。
なんだ…そういう風に笑えるんじゃん。
ちゃんと…感情と表情が伴っている。


「…?どうかした?」


俺はどうやら彼女をじっと見つめていたらしい。


「あ、いや…なんでもない。じゃなくて…なんでもないです。」

「『なんでもない』の方が、あなたの『素』の状態なんでしょう?
あなたの一番話しやすい話し方で話してくれていいのよ。」

「え…?」


なんで…こんなことを言うんだ…?
教師…なのに…。

しかもこんなに真っすぐな目をして…。


こんなに真っすぐ見つめられると、かえって目を逸らせなくなる。