ほとんど黒板、教科書、その他テキストしか見ない。
俺たち生徒の顔なんて、ほとんど見えてないみたいだ。
それとも…ただ単にゆとりがないだけなのか…?


カツカツカツと、チョークの音が聞こえる。


数学教師にしては字が綺麗だ。いや…普通に字は綺麗だな。

そんなことを思いながら、俺はぼんやりと外を眺める。


相模香織…
朝、巧が言っていたような恐れられる先生には思えない。

授業はまぁ葛西より分かりやすいし、声もよく通る。見た目だって悪くない。髪型は少し重いけど。


「高橋くん、暇ならこの問題を解いてくれないかしら?」

「え…?」



突然の名指しだ。
相模香織と目が合った。