『…直也、消しゴム忘れたの?』 「うん。悪いけど貸してくれない?」 …うそつき。 体の横から見える、直也の机に置かれた消しゴムを見ながら、私は心のなかで思う。 だてに、直也の背中をずっと見ているわけじゃない。 私も嘘つきだけど、直也も嘘つきだ。 『も~、仕方ないなぁ。貸してあげる!』 でも、嘘だと知りながら、騙されることにした。 無駄に呆れたような声を出して、けれども顔では笑う。