…だって。 バレない、そう思っていたのに。 バレないと思っていたから、見ていたのに。 直也が、こちらを振り返ったから。 だから私は、動けなくなる。 「…あっ!」 交わる視線と、飲み込まれる吐息。 そこら辺の空気が全て絡みついたように、私は1ミリも動けなくなる。 振りほどきたいのに、振りほどけない。 …やっぱり、振りほどきたくない。 そんな、空気。