…一度。 一度だけでいいから、直也を真正面から見てみたい。 真正面から見た直也の笑顔、とか。 真ん前から見た、直也の真剣な顔、とか。 ずいぶん前から、直也を正面から見れていない気がする。 「…すいませんごめんなさい。 寝ていた俺が悪いです。聞いてませんでした。」 直也の言葉が、右から左へと、私の頭を通り抜ける。 何かが溢れ出すように笑いが漏れたから、直也が何か面白いことを言ったんだろう。 だけど、私にはそんなの聞こえてこない。