この時の俺は、とても幸せだった。 いや…、俺だけじゃない。 愛未ちゃんや直也くん、酒井さん。みんなに優しい時間が流れていたと思う。 ――…そう、信じて疑わなかった。 本当は、それどころじゃなかったのに。 今のこの時間、愛未ちゃんたちの間には、大変なことが起きていたのに。 なにも知らない俺は、酒井さんと穏やかな時間を過ごしていた。