この光景、何度見ただろうか。 固そうなベッドに、薬の匂い。 生活感がない、必要最低限で揃えられた家具。 …本来なら、そこに姉ちゃんがいるはずで。 医者の酒井さんが、なにかを考えるように一点を見つめている。 ――…ずっと前に見た、懐かしくも悲しい光景。 「…あぁ、圭くん。」 俺に気づいた酒井さんは、静かに立ち上がり、こちらを振り向く。 皺の増えた作ったような笑いが、酒井さんが疲れていることを表現している。