『…言えないのなら、言わなくていいです。』 蚊の鳴くような声だった。 弱く、けれどもハッキリとした言葉で、お医者さんを見つめる。 お医者さんはまた、困ったように微笑んだ。 「…そういうわけじゃないんだよ。」 ――じゃあ、どういうわけなの? そう聞きたいけど、もちろん聞くことはできなくて。 私は出かかった言葉を、慌てて封じ込める。 背中越しにギュッと、つめの跡がついてしまうぐらい、手のひらを強く握った。