『…ねぇ。』 椅子をクルリと180度回転しながら、私は静かに口を開く。 息を飲む音さえ聞こえそうなこの静けさの中、私の声だけが妙に浮いていた。 「…ちょっと待ってね。 胸の音を聞かせてくれる?」 …お医者さんは、私の話を聞きたくないらしい。 私は言いたいことをかみ殺しながら、ギュッとシャツを掴む。 そして、それを小さく捲り上げた。 …別にやましいことをしてるわけじゃない。 胸の音を聞いてもらう、ため。