知らなければ、よかった。 知ってほしくなかった。 お互い知らなければ、2人とも幸せだったのに。 知らないまま、残酷な運命が進んでいくのと、 残酷な運命を目の当たりにすること。 …どっちが、幸せなのかな。 『……なお、や…。』 私の声が、3人の間を吹き抜けるように宙を舞う。 「あちゃー」とか言いながら、緊張感を全く持たない浅野目くん。 そんな彼の顔を一時たりとも見ずに、直也の視線は私だけを捉えていた。