少し道を歩いたその先に、なんとなく後ろ髪を惹かれた私は、小さく立ち止まる。 ふと、もう一度だけ。 もう一度だけで良いから、直也の顔が見たくなって。 私が直也の方へと振り返った瞬間、それを待ち構えていたかのように、直也が大きく手をふった。 「愛未! 俺、待ってるから!」 ――…直也はどこまでも、どこまでも優しい人。 直也の優しさに触れた私は、もう一度直也がいない世界へと歩きだしたのだった。