だけど那智はどうだろう?
那智は生まれた時から俺の傍にいたから、俺以外の世界を知らない。
両親があんなんだ。
必然的に那智の世界の中心は面倒を看ていた俺になる。
でも那智だって成長に従うに連れて外界に興味を持ち始めるだろう。
現に今も、自分と周囲の価値観に首を傾げる毎日を送っている。
兄貴と手を繋ぐのは悪いことなのか、くっ付き合うことは気色の悪いことなのか、男兄弟としてあるまじき姿をしているのか。
那智は片隅で疑念を抱いているに違いない。
俺みたいに成長し切って、尚且つ割り切れる性格ならまだしも、中学生の那智はまだ心が幼い。
疑念もいっぱいだろう。
外の世界に魅力も感じるだろう。
他人に興味も抱くだろう。
今は俺中心の世界に囚われて、俺の背を一生懸命に付いて来ている。
一生懸命に手を伸ばして、俺の手を握ってくれている。
俺の言うことだけはうんと素直に聞くし、俺のためなら何でもしたいって思ってくれる可愛い一面を持ってる。
―…いつまでも、そんな那智でいて欲しい。
繋ぎ止めておきたい醜い俺がいる。
他人になんざ興味を持って欲しくないし、俺以上の存在も作って欲しくないし、俺から離れて欲しくないし。
だから俺は先手を打ちたいんだ。
卑怯かもしんねぇけど、俺は那智を外の世界に出したくは無い。また孤独になっちまう。
ひとりぼっちになりたくない。
永遠にふたりぼっちでいたい。
故に醜悪に染まった感情が俺を動かす。
那智のすべて、俺にくれないか?
その台詞はこれから先、那智が俺から絶対に離れないための約束。
いつまでも那智の絶対的存在になりたい、俺の醜い、そして限りない兄弟愛から生まれる感情。



