「よく話してくれたな。エライぞ那智。
もういいから…、十分だ。怖いことは思い出さなくていい。
そうか、妙な輩が那智を襲ったわけだな?
しかも故意的にっぽいな。
那智や俺のことを知ってそうな素振りだ。無差別に人を襲ったとは思えねぇ」
「しかも名前知ってました。
その人、『兄へのダメージは弟が一番』って」
「犯人がそう言ったのか?」
「はい。兄さま、大丈夫ですか? 兄さまは襲われてません?」
「ああ、俺は大丈夫だ」
しかし俺への恨みの犯行が強い…な。
俺も随分恨みを買うようなこと、したしな。
中高時代は不良とつるんでたことあったし、性格がこれだから人(主に女子)を泣かせてきたし、両親への脅しのためにどんなことでもやったからな。
恨まれているであろう人物の顔を想像すると埒が明かねぇ。
―…けど、弟を傷付けたってことだけはマジ赦せねぇな。
まさか俺から弟を奪うつもりだったのか?
だったら尚更、この事件、見過ごすわけにはいかない。
俺から弟を奪おうなんざ、どういう目に遭うか…教えてやる。
どす黒い感情が渦巻く中、俺は抱き締めてる那智の体を更に引き寄せて首筋に頬を寄せる。
首筋はじんわりと温かい。
この体温が消えるかと思うだけで、俺は体が震える。
「那智、よく聞けよ。
これから暫く、単独外出は禁止だ。常に兄さまと行動すること」
「一人で外で歩いちゃ駄目なんですか?」
「誰かに襲われそうになった時、兄さまが傍にいないと駄目だろ?
一人で行動してくれるな。学校に行く時は俺が送り迎えしてやる」
「うー…、でも兄さまが大変じゃないですか?」
「いや、ちっとも。
それよりも那智の命が誰かに奪われようとした。
それが赦せねぇで仕方がねぇよ。
那智、てめぇは兄さまの傍にいないといけないんだぞ。
なのに誰かに命を奪われるなんざ言語道断。
俺は誰にもてめぇを奪われたくない。
俺等、いつだってふたりぼっちだろ?
―…なあ那智。
兄さまに、てめぇの全部、くれないか?」



