そんなおれの腕を掴んで、知らない男の人はおれを路地裏に連込みました。
男の人、
「下川の弟の方だな? 兄の治樹は大学生だもんな」
って独り言を零した刹那、おれに襲い掛かってきたんです。
果物ナイフで淡々とおれに切り掛かってきました。
もう恐くて怖くて…だけど、助けてなんて声も出なくて。
とにかく必死に抵抗して逃げました。
途中何度も捕まって殴られました。
けど、おれ、殴られることに対しては耐久がありますから。
無我夢中で逃げて逃げてにげて…。
どうにか振り払って大通りに出て、人目の多い場所に出たんです。
それからはワケ分からなくなって…、誰かに助けを求めたいけど誰に助けを求めればいいか分からない。
もう兄さましかいない。
怪我してましたけど、おれ、バスに乗って兄さまの通う大学まで行きました。
何人かおれに大丈夫かと声を掛けてくれたんですけど、他人がこれほどまでに恐かったことはありません。
ただでさえ喋ること苦手なのに、その時ばかりは声が出ませんでした。
ぶるぶる震えながらバスに揺られて、兄さまの通う大学に行ったんです。
兄さま、午後まで授業があるから…、正門で待ってようって…ずっと、あそこで。
「今思えば携帯を使えば良かったです。
そんなことさえ…おれ、忘れてました。
変な人に襲われて…おれっ、頭がパニックに…、兄さま…おれ…」
恐怖を思い出して、那智は身を震わせた。
母親や見知らぬ恋人に手を上げられたことはあっても、あんな風に見ず知らずの他人に襲われるなんて初めてだ。
恐かったと連呼する那智を抱き締めて、
「もういい」
俺は弟の気を落ち着かせる。
男の人、
「下川の弟の方だな? 兄の治樹は大学生だもんな」
って独り言を零した刹那、おれに襲い掛かってきたんです。
果物ナイフで淡々とおれに切り掛かってきました。
もう恐くて怖くて…だけど、助けてなんて声も出なくて。
とにかく必死に抵抗して逃げました。
途中何度も捕まって殴られました。
けど、おれ、殴られることに対しては耐久がありますから。
無我夢中で逃げて逃げてにげて…。
どうにか振り払って大通りに出て、人目の多い場所に出たんです。
それからはワケ分からなくなって…、誰かに助けを求めたいけど誰に助けを求めればいいか分からない。
もう兄さましかいない。
怪我してましたけど、おれ、バスに乗って兄さまの通う大学まで行きました。
何人かおれに大丈夫かと声を掛けてくれたんですけど、他人がこれほどまでに恐かったことはありません。
ただでさえ喋ること苦手なのに、その時ばかりは声が出ませんでした。
ぶるぶる震えながらバスに揺られて、兄さまの通う大学に行ったんです。
兄さま、午後まで授業があるから…、正門で待ってようって…ずっと、あそこで。
「今思えば携帯を使えば良かったです。
そんなことさえ…おれ、忘れてました。
変な人に襲われて…おれっ、頭がパニックに…、兄さま…おれ…」
恐怖を思い出して、那智は身を震わせた。
母親や見知らぬ恋人に手を上げられたことはあっても、あんな風に見ず知らずの他人に襲われるなんて初めてだ。
恐かったと連呼する那智を抱き締めて、
「もういい」
俺は弟の気を落ち着かせる。



