×
那智を家に連れて帰った俺は、まず那智を寝室に連れてって寝巻きに着替えさせた。
その後は手当てをし忘れていないかどうかの確認。
こめかみ部分が少し切れてたから、新たにガーゼを用意して患部に当てて固定。
テーピングしてやった。
「今日は兄さまが夕飯作るから」
敷布団の上に寝かせてた那智の頭を撫でて、俺は弟に毛布を掛けてやる。
ごめんなさいとありがとうを交互に口にする那智は、枕元に座っている俺の方に擦り寄ってきた。甘えているのは一目瞭然。
「那智…、そろそろ兄さまに何があったか教えてくれないか?」
二人きりになれば那智も身の上に何があったか話してくれるだろう。
何より那智は俺に隠し事をしない性格。俺に包み隠さず言ってくれるだろう。
これは自信を持って言えること。
那智は俺を信用してるし、俺も那智を信用しているんだから。
「よく分かんないんです」
ポツリ、那智は心境を漏らす。
よく分からないの意味が、俺にもよく分からない。
漠然とした説明をもっと噛み砕いてくれるよう、那智を落ち着かせながら尋ねる。
「一瞬のことで…、よく分かんなかったんです」
那智は自分の中でも整理するように、語り始めた。
おれですね。
今日は午前中、学校に行って勉強してたんです。
正午過ぎまで保健室で勉強していました。
三好先生に、あ、保健室の先生なんですけど、先生に「お昼はどうするの?」って聞かれたから、おれ、家に帰って食べますって答えたんです。
給食を食べて行けって言われたんですけど、何だか気分が乗らなくて。
それで正午過ぎに学校を早退しました。
その後はコンビニでおにぎりを買おうと、帰路から外れて寄り道をしました。
いつも兄さまと行ってるコンビニです。
あそこに向かって住宅街を歩いていたら、突然、知らない男の人が声を掛けてきて。
他人に声を掛けられることなんて滅多に無かったものですから、びっくりして、固まっちゃって。