「少しばかり仲良過ぎないか? ずっと一緒って」
「何かおかしい会話でもしてるか?
俺等兄弟は今までずっと二人きりで生きてきた。
ずっと一緒にいてぇって思うのも当然だろ?
女も恋人も結婚もいらねぇや。
俺には弟がいればそれでいい。
弟さえいれば、他に何もいらない。
―…だから俺から弟を奪う奴は誰だろうと赦さない。
誰であろうと、な」
シニカルに笑う俺に絶句する二人。
直後、
「身近にまさかの近親相姦者がっ!」
しかも友人があろうことかホモだったなんてっ!
素っ頓狂な声を上げて驚いている優一に、
「声を落とせって!
近所に聞こえるだろ!
こういうのってデリケートな問題だろ!」
浩司が盛大なツッコミをした。
近親相姦、ホモねぇ。
一応家族愛で言ってるんだけどなぁ。
まあ、どう思われても構わない。
今の俺の胸に締めているのは、那智を傷付けた奴への殺意。
そして那智に対する大きな独占欲だった。
(那智がずーっと俺の傍にいるには、口実だけじゃ駄目なのか。
何か目に見える新たな関係を作ればいいのか? じゃあ俺が奴等の言うような関係だったら…)
嗚呼、そうか。
俺が近親相姦、ホモだっつったら、那智は俺の元にずーっといるのか。
だったら俺、それでいいや。
紫色になる空の向こう、日は沈みかけていた。
⇒05