「那智くんってさ。治樹のこと、古風な呼び方してるんだな」
不意に優一が那智の兄への呼び名の話題を出してくる。
「ぅ…」那智は顔を曇らせる。呼び名の指摘は、これまで散々人から受けてきた。
あまり触れて欲しくない話題だ。
だけど優一は構わず話を続ける。
「呼び方は古風だけど、治樹と凄く仲がいいんだな。兄ちゃん、優しい?」
「ぅ…ん……や、優しぃ…です」
「下川の新たな一面を見られた感じだな。お前も人間だってことがよく分かった」
そりゃどういう意味だ。
ギッと浩司を睨むけど、向こうはヘラヘラと笑うだけ。
優一もヘラヘラと笑う。
なんだよ、こいつ等。
眉間に皺を寄せてたら、背中に乗っている那智が俺のことを優しいと繰り返す。
「兄さま…とっても優しぃ…です。ずっと、一緒にいたい人です」
「へぇ、ずっとか。愛されてるな、治樹」
俺は那智の言葉に不満を抱いた。
「那智、ちげぇだろ」
言葉の訂正を求める。
那智は間髪容れず、無邪気に笑った。
「ずっと一緒にいる人です…、ずっと、一緒…」
「―…それでいいんだよ。いたいじゃなくて、いるんだ。
那智、俺から離れることは許さないっていっつも言ってるよな」
俺は微笑を浮かべた。
「はい」那智も笑顔で返事をする。
これは俺等にとって日常会話。
向こう二人が大きく戸惑いを見せていたけど、気にすることはなかった。俺等にとって日常会話の一部なんだから。
その内、
「すっごく仲いいけど」
おずおずと浩司が俺に質問してきた。



