「通り魔…とかじゃないのかしら。刃傷からして」
話題が一変、安河内が那智の怪我は通り魔なのではないかと意見する。
だったら警察に届けた方がいい。
助言する安河内にナナシ女も同意を見せた。
こんな傷を負わす奴がいると思うだけでゾッとする。
安穏を掴むためにも警察に被害届けを出した方が利口なのではないかと、俺に意見した。病院に連れて行った後でも、警察に行くよう促される。
警察が那智の仇を取ってくれるのか?
俺は小さな手を握り直し、思考を巡らせて那智を見つめ続けた。
誰だろうと、俺は那智を傷付けた輩を赦さない。
無差別の通り魔だろうが、故意的に誰かがした犯行だろうが、那智を傷付けたには変わらない。
那智を傷付ける。
それは俺から那智を奪うも同然。誰だろうと赦さない。
法で裁くなんざ生ぬるい天誅は下してやんねぇ。
日本の法なんざ生ぬるくて反吐が出る。
俺直々に天誅を下してやる。
「警察には出さねぇ」
ポツリと零す俺の独り言に、「でも」ナナシ女が出した方がいいと助言。
「出せねぇよ」力なくおれは言葉を続ける。
「必然的に親が出てくるからな…、そりゃ俺も那智も困る。
親とはもう関わりを極力持ちたくねぇ。
だけどこのままにはしねぇ」
「どうするのよ」
「―…さあな」
意味深に返答する俺に周囲が反応を起こす、その前に那智が呻き声を上げた。
ジワジワと目を開ける那智に、俺は思わず声を掛けて顔を覗き込む。
「兄さま?」
那智の声音に心底安堵する俺がいた。
「良かった!」
俺は那智を抱き起こして、そのままキツク抱擁する。
「痛いです…」
那智は顔をギュッと顰める。けど俺は気にせずに抱擁し続けた。



