ポン―、軽く肩を叩かれて俺の体が跳ねる。
俺の隣に腰を下ろしてきたのは浩司だった。
「大丈夫だ、下川。弟くんは眠っただけだよ。
お前が応急処置したんだし…、病院に連れて行って安静にしていれば、すぐによくなる」
「落ち着け」取り乱し始める俺の気を落ち着けようと声を掛けてくれるけど、俺の心には響かない。
他人の言葉なんて紛い物だ。
落ち着けるわけ無い。
優一が何か飲み物でも飲むかと尋ねてくるけど、俺は首を横に振る。
飲み物で気が落ち着けられるほど、俺も簡単な人間じゃない。
俺の気を落ち着けられるのは、血を分けた兄弟だけだ。
声が聞きたい…、弟の声が聞きたい。
「離れなきゃ良かった」
俺は項垂れて、弟の手を握る。
握り過ぎたのか弟の顔に皺が寄った。
でも目を覚ます気配は無い。やんわりと手だけ握り返してくれる。
「治樹がこんなにも取り乱すなんて…、けど兄弟がいるなんて知らなかったな。
俺、高校時代から一緒だけど弟の話題なんて聞いたこと無かった」
優一の呟きに、
「下川は大半、自分の世界に篭ってるからな」
浩司が微苦笑。
他人に興味のねぇ俺だ。
興味が無いんだから自分のことを話すこともしねぇだろ、普通。
話してどうなる。
一時的な話題を見つけて語りに混じり、友好を深める…ってか?
そんなおざなりな感情だったら、俺は要らない。



