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「ちょっとサイッテーブラコン男。面、貸しなさいよ」
一日サボリを置いて(那智と一日中家で過ごしていた)、大学に行ってみるとクソめんどくせぇ女が俺を待ち構えていた。
っつーか、バス停を下りたところから、こいつが絡んできた。
めんっどくせぇ奴だ。
俺を見るや否や面を貸せだの、話があるだの、ぶっ飛ばさせろだの、やたらめったら絡んできやがる。
ぶっ飛ばしたいのはこっちだっつーの。
てめぇ、那智を傷付けやがっただろうが。
文庫を読んでいた俺はナナシ女を一瞥、また元のページに目を落として大学の校舎に向かう。
後ろから横からギャンギャン吠えられてきたけど総無視。
鬱陶しいって振り払うことさえ億劫だった。
だけどこいつ、めっちゃくちゃしつこい。
どっこまでも俺を追って来やがる。
同じ講義を取ってたら近くに座ってきやがるし、
移動する時も後ろから付いてくるし、
極め付けには男子トイレに逃げ込んだ俺を待ち構えてやがった(さすがにそれは勘弁しろって)
ウンザリする俺を余所に、ナナシ女はジトーッと俺を睨んで付いて回る。
浩司や優一がそんな俺を面白がって様子見してくるけど、俺は堪ったもんじゃない。これじゃあストーカーだろ。
ようやく別々の講義になってホッとする間もなく、講義終了後、キャツは俺を探し出して話があるの一点張り。
今日は午後まで授業があるから帰るわけにも行かず、俺はさっさとナナシ女を巻いて大学の学食に逃げ込んだ。
「あ、ツンデレ治樹くんみーっけ。今日は一緒に食えるな、治樹!」
一人で昼食を取っていたら浩司と優一に見つかった。
トレイを持った優一が颯爽と向かい側の席を陣取ってくる。
片眉をつり上げる俺に対し、
「治樹ゲットだぜ」
優一は無邪気に笑って椅子に腰掛けた。その隣に浩司が腰掛けてくる。
俺の了解も得ず、一緒に食い始めるこいつ等って…。
俺は一人で食うのが好きなのになぁ。