上体を起こしておれは、兄さまに倣って肩口に顔を埋めた。
 

シャツを剥いて露になった肌に噛み付く。

本気で噛まないと兄さま、怒るだろうから、おれなりに本気に噛み付く。
歯形がくっきり肩口に残るまで、薄っすらと体内出血するまで、おれは兄さまに噛み続ける。

なんだか吸血鬼にでもなった気分だ。

血を吸うわけじゃないけど、おれの中の吸血鬼のイメージって肩口に噛み付くイメージがあるから。



「那智、俺から離れるな。
離れる日が来るなら、俺はてめぇと―――…」



頭を撫でてくれる兄さまが口を閉ざす。

離れる日が来るなら…、その先は言わずもおれに伝わってくる。


兄さまがおれから離れて行く日があっても、おれは兄さまから離れて行くわけないのに。


意を込めておれは兄さまに噛み続ける。

兄さまが満足するまで。

元通りの兄さまに戻るまで。


戻らなくても、兄さまは兄さま。


もし、兄さまが壊れる瞬間が訪れようとも、おれは兄さまから離れない。

兄さまはおれを守ってくれた大切な人だから。


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