「うっ…」



シャツを剥かれたと思った矢先、肩口に鋭い痛みが走った。

昼間噛み付かれた箇所に、また兄さまが噛み付いてくる。
 
兄さまはおれに対して噛み癖がある。

おれに痕を残すことで、自分の存在を忘れさせないようにしているのかもしれない。


本気で噛み付いてくる痛みに震えながら、おれは兄さまの頭を抱きかかえる。


「だいじょうぶ…、兄さまはひとりじゃないです。
おれたちはずっと一緒。

おれは兄さましか見ていませんから…。

不安にさせるなら、おれは態度で示しますから…。
兄さまの望むこと、なんでもしますから」



「―…じゃあ、気持ちを俺の体に残してくれ。不安だから」



肩口から顔を上げた兄さまは、アクの強い笑顔を見せる。

おれでも滅多に見ることができないアクのある笑顔。

本当に今の兄さまは子供で臆病、我が儘だ。

心の均衡が崩れてるせいなのかな。



明日には元に戻ってるかな。



どっちにしろおれのせいで兄さまは情緒不安定。

だったら安定させるために、おれは兄さまの望むことをするだけ。