スルッと頭に置かれていた手が背中に回ってくる。
全体重を掛けてくる兄さまはおれの肩口に顔を埋めてきた。
骨がミシッて軋むほど力強く抱き締めてくれる。
「兄さま?」
名を呼べば、
「取られたくない」
兄さまは繰り返し、上擦った声で吐露した。
肩口に深く顔を埋めて、貪るようにおれの体温を求めてくる。
今の兄さまは壊れてしまいそうだ。
硝子細工みたい。
「弟を奪う奴が出てきたら」
―…俺がそいつ、消してやる。
他人が聞いたらきっと狂った発言だって思うだろう。
でも兄さまの狂気満ちた台詞にさえ、おれは普通だって思えてしまう。
それが兄さまの望むことだから。
おれは兄さまの望むことを全部叶えてあげたい。
いつもおれを守ってくれた兄さま。
どんな時でも傍にいてくれた兄さま。
おれの前に立って、身を挺してくれた兄さま。
親に叩かれそうになったら、兄さまは体を張って守ってくれた。
恐怖に泣き愚図るおれをあやして、兄さまはおれに子守唄を歌ってくれた。
食事を抜かれた時、お腹を空かせたおれのためにスーパーまで走って万引きをしたこともあった。
悪いことだと分かっていても兄さまはおれを優先してくれた。
おれはいつも、兄さまに守られていた。



