「那智は二人きりが一番好きか?」
「はい。兄さまと外出するのも大好きですけど、誰にも邪魔されない二人きりの時間を過ごすのが一番好きです」
「那智は兄さまにゾッコンだな」
「恋人も要りません、友達も要りません、兄さまがいれば十分ですもん」
笑顔の輝きが増す。
兄さまの笑顔を第三者が見たら、歪んだ笑顔だって言うと思う。
―…まだ兄さまは、いつもの兄さまに戻り切れていない。
「よく聞け、那智」
兄さまはおれの腹を軽く叩いて視線を合わせてくる。
強い眼光に捉えられた。逸らすことは許されなかった。
「俺等を理解できるのは俺等兄弟だけだ。
理解者は血を分け合った片割れだけ。
他人なんざ誰も俺等を理解できやしねぇ。
他人に優しさを向けられても、それはおざなり。忘れろ。
他人に笑顔を向けられても、それは建前。騙されるな。
他人に手を差し伸べられても、それは偽り。手を取るな。
他人なんざ必要としなくてもいい。
今まで生きていけただろ?
これからも必要としなくていい。
那智は兄さまだけを見て、傍にいて、笑っておけばいい。
恋人も友達も他人も那智には必要ねぇよ。
必要なら兄さまが代わりになってやるよ。
友達にも恋人にも他人にも。
兄さまが守ってやるから…、ずーっと守ってやるから。
―…取られたくねぇ」



