「兄さま。おれも筋トレしたら、兄さまのように腹筋割れます?」
体をスポンジで擦っている兄さまの手が止まった。
不思議そうな顔でおれを見てくる。
「なんだ、腹筋割れたいのか?」
「強そうに見えるじゃないですか」
「ははっ、やめとけやめとけ。
那智はなよっちい方がいいって。
腹はぽよぽよのままでいいんじゃね?
その方がお似合いだ」
それ、ゼンッゼン褒め言葉じゃない。
脹れるおれに、
「三日も続かないだろ」
兄さまは鼻で笑ってくる。
うっ…、反論は出来ない。
確かにおれ、運動はちょっと苦手だし。
「で、でもでも目標があれば続くと思いますよ、筋トレ!」
「へぇ。どんな目標?」
「今まで兄さまに守ってもらってたんで、今度はおれが兄さまを守ります。
兄さまよりもですね、つよーくなって、体も大きくなって、喧嘩もできるよーにっ、なんで笑うんですか!」
しごく真面目に言ったつもりなんだけど、兄さまは大声で笑った。
笑い声が浴室を満たす。
おれの顔を見て二度も三度も笑う。
すっごく失礼だ!
「兄さま!」
「てめぇが俺よりでかくなるわけねぇだろ。てめぇの息子さんに聞いてみろよ」
息子…、おれは下肢に目を向けた。
………。
うん、ちっちゃい。
うううっ、そ、そりゃ兄さまの方があれでそれでどーんだけどっ、おれ、成長期だしっ!
それに何だか馬鹿にされた気分だしっ!
「どうだ? 大きくなりそうか」
「うううっ…、な、なりそうです!」
「どーれ」
「わわわっ!」
浴槽を覗き込んでくる兄さまに俺は思わず背を向ける。



