こうしておれ達はせっまい浴室に二人で体を押し込む羽目になる。
うん、何度も経験あるからいいけど、問題は風呂が狭いってことだよなぁ。
兄さま、体が大きいし、おれも成長期に入ってるから、男二人で浴槽に入るにはちょっときつい。
幸い、おれが平均より体が一回り小さいから、まだ何とか二人で入れるけど。
昔みたいに余裕はなくなったなぁ。
昔は兄さまとおれが一緒に入っても浴槽に隙間があったのに。
チャポン―。
湯船に浸かるおれは水を掬って遊ぶ。
水蒸気で満たされる浴室をぼんやり見つめて、水を掬っては落とし、掬っては落とし、熱めの湯を楽しむ。
その間、兄さまは体を洗っていた。
おれは兄さまの逞しい体に視線を投げる。
程よく付いた筋肉が羨ましい。腹筋、割れてるし。
―…だけど兄さまの体、傷だらけだ。
おれと同じように傷の痕ばっかり。
打撲、火傷、痣、色んな傷痕が体に刻まれている。
同じ痕がおれの体にも残ってて、それをクラスメートから見られたから…、教室に行く気が失せたんだよな。
これについて説明したり同情されるの、すっごくヤだったんだ。
しつこく聞いてくるもんだから、おれ、保健室に逃げるようになった。
傷痕については触れて欲しくなかったんだ。
言ったとしても、誰がどうしてくれるわけでもないし。
おれを救ってくれたのは兄さまだけだ。
だからこの傷痕は兄さまにだけ曝け出せる。
共に傷を負った兄さまにだけ曝け出せる体だ。
例えば兄さまに腕を引っ掻かれても、それは兄さまだから曝け出せるし咎めもしない。
例えば兄さまに肩を噛み付かれて歯形が残っても、それは兄さまだから隠すことをしない。
堂々と曝け出す事ができるんだ。