―――…勿論、これは夢。
なんてことのない夢の一片を、俺は垣間見ている。
きっと目が覚めたら、
俺は鳥井に借りている和室部屋に居て、
敷布団の上に寝転がって、
小さな弟が俺の腕の中で身を丸くしているに違いない。
嗚呼、こんな生ぬるい夢、見るだけ無駄だし胸糞悪い。
現実の俺等が掴んだ幸せを、夢の中の俺等が全否定しているみたいで腹が立つ。
俺等は不幸せなんざ思ってねぇよ。
幸せなんだからな。
さあ、
さっさと目を覚まそう。
悪い夢から目を覚まそう。
俺の、昔…抱いていた夢から目を覚まそう。
今日もふたりぼっちで生きる、ふたりだけの幸せな一日が待っているに違いねぇんだから。
END