結局時間ギリギリまで飯食っていたせいで、俺等はバタバタと学校に行く仕度する羽目に。


「急ぎなさい」母親から大いに呆れられた。


さっさと着替えを済ますと、「いってきます」俺は那智と一緒に家を出た。
 
朝の光が優しく俺等を出迎えてくれる。
心地良い朝日を浴びながら、俺等は晴天の下、通学路をゆっくりとなぞって目的地に向かう。


「兄さま、帰ったらゲームしましょう! 今日こそ勝ちますから!」


なんたって秘策を考え出した!
那智が意気揚々と俺に挑戦状を叩きつけてくる。

「何度やったって同じだと思うけどな。昨日も大連敗だったろーに」

鼻で笑ってやれば、那智は失敬なとばかりに唇を尖らせた。

「今日は勝つかもしれないじゃないですか」

「一週間ずーっと同じ台詞を口にしてるぞ。バーカ」


酷い酷い、不貞腐れる那智に一笑して俺はあいつとバス停で別れた。
俺は今から大学、那智は中学校に向かう。

なんてことのない一日の始まり。

今日も平々凡々な日常が送られるんだろう。


俺はそう思いながら、鞄から文庫を取り出して中身を開いた。



「あ、今日は優一や浩司と約束があったな。ボーリングとかクソめんどくせぇ」