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那智お気に入りのパスタ店に連れて来た頃には、あいつも平常心と落ち着きをすっかり取り戻していた。
それどころか少し気持ちが浮ついてるみたいだ。
テーブルに付くや否や、そわそわとメニューを開く。
「兄さま、これ」
お気に入りメニューを指差してくる那智に、
「俺がまだ決まってねぇから」
微苦笑して俺もメニューを開く。
「兄さま、おれ…アイスクリームも食べたいです」
「んー? ゲッ、アイスクリームって…、そりゃパフェじゃねえか。てめぇ全部食いきれるのか?」
ジーッと那智がこっちを見つめてくる。いつまでも見つめてくる。
この状況のことわざを出すなら…、目は口ほどに物を言うだな。
黙って俺を見つめてくる那智の目が訴えてくる。
食べたい食べたい食べたい、一緒に食べよう食べましょうってな。
「にーさま」
「………」
「にーさま!」
「……。わーったわーったよ。ただしパフェの味は俺が決めさせろよな」
一緒に食べりゃいいんだろ、俺が折れると那智は満面の笑みを浮かべてきた。
ったくもう、俺と半分にしても食いきれねぇだろうに。
俺が半分以上平らげることになるんだぞ。
まあ、好きだからいいけどさ。
俺はチラッと那智を一瞥する。
メニューを眺めている那智は子供らしく笑顔を零していた。
さっきの騒動が嘘のようだ。
うん、やっぱこうじゃねえと。折角那智を喜ばせるために昼食食う約束したんだし。
にしてもあのナナシ女、思い出しただけでも腹が立つ。
弟を傷付けやがって…。
那智を傷付けてもいいのは、弟を守ってる俺だけだっつーの。