「はぁーあ…上司部下共々情けねぇザマだな。
ガキ達相手にまんまと食わされるとは」


病室のベッドに腰を下ろしていた益田はこめかみを軽く擦った。

「迂闊でした」

弟を逃がして申し訳ない、と柴木も項垂れる。


昨晩、兄弟の手によって一杯食わされた二人の刑事は物の見事に敗北感を味わっているところだった。


益田は兄の手によって背後から襲われ、柴木は泣きじゃくっている弟の手によって薬を嗅がされ、気付けば、車内や病院のベッドでお寝んね。


まんまと兄弟には逃げられてしまった。


情けない話だと益田は苦虫を噛み潰した顔を作る。

長年の経験上、こんなにも情けない仕事の失態を犯したことは無い。


人生の汚点だとも言える失態を犯してしまい、ぐうの音も出ない状態だった。

上からこっ酷く絞られるに違いない。


今、兄弟の行方を捜査官が追ってくれているが、どうやら兄弟を匿っている人物がいるよう。

簡単には見つからないだろう。




折角弟の方が白状してくれたと思ったら、こ・れ・だ。




舐めてるのかクソガキ共、一発くらしてやりたい気分だと益田は吐息。

そうは言うが、彼等の歪んだ性格はちょっとやそっとじゃ緩和しないのだろう。


「なんだか銭形にでもなった気分だぜ。
あいつ等を捕まえるまで追っ駆けて説教してやりたい」

「兄弟はルパンですか」

「とっつぁんと呼ばれたいよ」


微苦笑する益田だったが、ふと険しい表情を作り柴木に尋ねる。