『治樹ってめっちゃ性格難だけどさ、治樹のことを必要とする奴は絶対いるんだからな。
俺がそうだぞ。
いつだって俺、治樹の味方だからな!』
俺はぎこちなく、優一の顔を覗き込む。
泣き笑いした面がそこにはあった。
手を伸ばして、半開きの瞼を閉じさせてやると、俺はどうしょうもなく感情が込み上げてきた。
くそがっ、制裁を下すどころが俺の負けかよ。
最後の最後で優一の一人勝ちじゃねえか。
俺をこんな気持ちにさせやがってっ、させやがって…っ、させやがって…ばかやろう…。
「ぅう…ぁあ…ぁあああああぁあ―――!」
堪らず、感情を爆ぜさせて、ぽっかりと三日月が浮かんでいる夜空に向かって咆哮。
だらしなく口を開けて、目から絶え間なくしょっぱい液体を流出。
嫌で堪らないのに息絶えた屍を抱き締めて、初めて他人に対して、大声で泣いた。
これが俺の選んだ道だって分かってはいるんだけど、
ふたりぼっちの世界を保つのがこんなに苦痛だなんて知らなかった。
失って初めて、優一がどういう存在が知っちまった。
知ったから悔しいし、認めたくないし、忘れたい。
だって那智に怒られちまうから。
俺には那智だけ十分なんだ。
こんな気持ちになったらいけねぇんだよ。
だから此処で大声で泣いて感情処理。
優一。
てめぇのために泣くんじゃねえぞ。
俺は俺のために泣くんだからな。
ひとりぼっちだったてめぇなんざ、てめぇの気持ちなんざ、ちっとも分からないんだからな。
仕方が無いから死体処理してやるけど、
てめぇなんか、
てめぇなんか、
て、めぇ…なんか、大嫌いだ。
「ああぁあああああぁあアアアアアアア―――!」
だい、きらい、だった。
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